子育て㉜:子供のためを思って叱ってあげる…その前にこれを読んでください

仁の子育て論

先日、知り合いの子供達と車で遊びに行きました。

車の中で子供達とお喋りをしているうちに、学校での話になりました。いろいろ話を聞いていると、ある子供が「あの先生は怒ってくれる」という発言をしました。

「怒ってくれる?? だって??」
怒られてるのに、むしろ喜んでる?
…不思議に思い、どういうことか詳しく聞いてみました。

一昔前、僕らが小学生の頃は、先生から怒られる場面は日常的にありました。場合によっては、吹き飛ばされるほど先生に殴られることもありました。僕の周りでは、少なくとも怒られて感謝するなんてこと、まずあり得ませんでした。

でもこの先生は怒ることによって感謝されている。そして、子供にとってもプラスに働いているように見える。
おそらくこの先生は子供の心理がよく分かっており、子供の心に響くような上手な叱り方をしてるんだと思います。

でもね、子供を怒るという行為には、大きな落とし穴があるんです。
例え子供のためであっても、その落とし穴に気づいてないと、結果的には子供にとってマイナスに働くこととなってしまうのです。

どういうことか、これから説明していきますね。

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怒られて感謝する理由

この「怒ることによって子供から感謝される先生」について、どんな叱り方をしているのか簡単に説明しておきますね。

この先生、叱る時はいつも、もの凄い大きな声で叱るそうです。他の階までその声が響き渡るほどの大声で、子供を怒鳴るみたいです。

でも全ての子供に対し、平等に叱る。依怙贔屓(えこひいき)することなく、どの子供に対しても同じように大声で叱る。そしていつも、どの子が相手でも真剣に叱る。
そんな先生だそうです。

この先生の良いところ、つまり怒鳴っているにもかかわらず子供達から慕われている理由は2つあります。

まずは全ての子供に対し、平等に接していること。
贔屓(ひいき)をすれば、子供は敏感に感じ取ります。平等に叱ることによって子供は不公平感を感じない、先生は自分たち全員のことを平等な目で正当に評価してくれてるんだと感じているわけです。

それともう1つ。
子供相手に真剣になっているという点です。

大人が感情を乱して激しく怒ることなんて、そうありません。大人である先生が、自分たち子供相手に感情をむき出しにして怒ってくると、子供からすれば
「先生は自分たちに対し真剣になってる」
「自分たちと本気で向き合おうとしている」
そう感じます。
子供の心理を理解した上で、この先生は上手な叱り方をしているというわけです。

 

僕の知り合いの子供たちが言っている、「先生が怒ってくれる」という言葉。
これはつまり、子供達は叱ってくれることに対し感謝しているのではなく、自分たち全員に対し正面から真剣かつ平等に向き合ってくれている、そんな先生の気持ちや姿勢に対して感謝しているのです。
ただ子供はそのことを言葉で上手く表現できないから、「怒ってくれる」という言葉が出てきているんだと思います。

この先生の、子供相手に強い口調で叱る行為、大声で怒鳴る行為。自分の真剣な思いを伝えるためには、ある意味有効なやり方だと思います。場合によっては、こういうやり方もアリかもしれません。

でもこういったやり方、いわゆる大人・先生という強い立場を使い大きな声で子供を威圧して言うことを聞かせるようなやり方は、正直僕はお勧めしません。例え大声を出して叱ることによって、こちらの真剣な気持ちが伝わったとしても、これが良いやり方だとは思いません。

こちらの真剣な気持ちを伝える方法というのは、探せば他にもあります。そして大きな声を出すなどして相手を威圧するというやり方は、子供が本当に危険な時や、緊急事態の時に取るべき方法です。

教育や子育てに必要なのは相手との対話であり、相手のことを理解してあげること。
相手を威圧するやり方は、こちらから相手に向けた一方通行的なコミュニケーションであり、そこに意思の疎通やお互いを理解し合うといった相互のコミュニケーションはありません。教育という観点から見れば、最も未熟な方法と言わざるを得ません。

そしてこの方法の一番危険な部分、落とし穴とも言える部分について、これから話します。

落とし穴とは…?

大きな声で叱るということは、その子供が何か悪いことをしたり、何か間違ったことをした時など、何かしらのトラブルが発生した時ですよね。じゃないと、大人が大きな声で怒鳴ったりしませんもんね。
そうやってトラブルや問題が起こった時に大きな声で叱られると、子供はどのように感じると思います?

自分が間違ってたと、素直に反省する?
逆に自分は悪くないんだと反抗する?
または自分はどうせ理解してもらえないんだと、悲観的になる?
それとも自分はなんてダメな人間なんだと、投げやりになる?

子供によって、いろいろ違ってくると思います。その子の心の状態や性格、または成長の仕方によって反応は様々だと思います。

でも1つだけ、共通する部分があります。
それは、
「トラブルが発生した時は、大きな声を出して相手を威圧することによって解決すればいい」
ということを学ぶという点です。

子供は基本的に、大人の真似をします。大人の行動から、社会・人生・人間関係…様々なことを学びます。子供の取る行動というのは、全て大人の真似なんです。

子供は常に大人の行動を見ています。常に大人が何を話すかを聞いています。トラブルが起こった時、どんな反応をし、どんな方法で解決していくのかを見ています。

だから子供が何かしらの間違いやトラブルを起こしてしまった時、先生や大人が感情を荒げて大声で怒鳴り散らして子供に言うことを聞かせるということをしていると、子供は単純に「困ったことが起こった時は、大声で相手を威圧して、力づくでこちらの言うことを聞かせればいいんだ」と学習します。

その結果その子供は、トラブルが発生した時は相手の言い分も聞かず怒鳴り散らし、自分の主張を力ずくで通してしまうような人間へと成長する可能性が出てきます。

そしてその子供が大人になった時、今度は自分の子供に対しても同じように「怒鳴って言うことを聞かせる」という方法を取ります。
すると、その子供もその真似をします。ひたすら負の連鎖が続いていきます。

子供の教育や子育てに必要なのは、子供との対話です。
子供の意見や考えをちゃんと聞き、受け止めてあげる。そして子供の考えを踏まえた上で、きちんと話し合う、一緒に考えてあげる。そうやって子供自身の頭で考えさせ、自分で答えを見つけ出させる。
自分の人生を、自分の力で切り開いていける人間に育ててあげるのが、僕ら親や大人たちの役目。

問題が発生した時は、冷静に状況を分析し、どう行動すべきか落ち着いて考えなければなりません。そのためには、トラブルが発生した時こそ冷静にならないといけない、ということを子供に学習させなければなりません。

だから子供が間違いやトラブルを起こしてしまった時は、大声で怒鳴るなんてしちゃダメなんです。そんな時こそ、冷静に子供と対話しないといけないんです。

僕ら大人が身を持って冷静に対処する姿を見せることによって、それが子供の手本となる。子供に自ら見本を示してあげることによって、子供に正しい姿・正しい行動を学習させるのです。

もちろん時には怒鳴らなければならない時というのも、中にはあると思います。でもそんな時でも、自分の姿・行動が子供にどんな影響を与えているのか、意識しておかなければならないんです。

とは言ってもこんなことを言ってる僕も、もちろんそれが完璧に出来てるわけではありません。
ついカッとなることもあります。
感情的になることも、もちろんあります。

そんな時は、素直に子供に謝ります。
「さっきはカーッとなって悪かったね」「さっきはお父さんが言い過ぎたね」「今のはお父さんが間違ってたよ」「冷静になって考えると、お前の言うことが正しいよ」と、正直に謝ります。

そんな僕の姿を見て子供も、
「完璧な人間などいない、だから間違ってたらきちんと謝ればいいんだ」
ということを、学習してくれます。

完璧になどする必要はありません。
ただ、子供は自分たち大人の姿を通して学んでいるんだということを意識するだけで、あなた自身の行動も変わります。

自分の行動が子供に対し、それほどまでに大きな影響を与えているんだと意識するだけで、子供への接し方も全く変わってきます。子供にとって何が大切か、というのが見えてきます。

感情的になってしまう時ほど、深呼吸して落ち着き、子供と向き合いましょう。今のあなたの姿こそが、子供の未来の姿です。

とは言ってももちろん、気負う必要は全くありません。
一番大切なのは、子供を信じてあげること。

子供の人生を背負うことの出来るのは、その子本人だけ。僕ら親や大人がしてあげられることは、限られています。

正直僕も、親として毎日が失敗だらけ、間違いだらけです。それでもうちの子は、出来の悪い親など構わず、たくましく育ってくれています。

まさに僕自身、毎日が試行錯誤の連続です。良かったら共に悩み、そして共に前に向かって歩んでいきましょう。

 

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