僕はチック症です。
いや、正確には「チック症でした」というのが正解でしょうか。
僕は小学校の低学年の頃にチックの症状が現れ始め、大人になっても直らず、30代の後半ぐらいまでチック症に苦しみ続けてきました。
今ではチックの症状が治った…というよりは、自分の意思で症状をコントロール出来るようになり、チックの苦しみから解放されることが出来ました。
あなたがこの記事を見ておられるということは、もしかするとあなたの子供にチックの症状が出ているのではないですか?そしてチックの症状が治まらず、親として悩んでおられるのではないですか?
病気というのは、それがどんなものなのか実際に自分がその立場になってみないと、なかなか理解出来ないものです。
でも、理解出来なくとも、親として何とかしてあげたい。
何とか子供を助け、楽にしてあげたい。
親であれば、誰しもそう思うのではないでしょうか。
だから実際にチック症で苦しみ、長年チックと向き合ってきた僕が、僕の分かる範囲でチック症についてあなたに説明していこうと思います。
まず最初に、子供のチック症というと「単なる癖みたいなものなんじゃないか」と思う人も多くいると思います。同じ動作を何度も繰り返す…まさに癖と同じですよね。
癖であるなら、意識すれば止めることも出来る。その行動をやらないように気を付けていれば、いずれ直るのではないか。
そう考えるのは、よく分かります。
でも、癖とチック症は全く違うものです。
これは実際に自分がチック症になってみなければ分からないことかもしれませんが、止めようと思っても止められないのがチック症なんです。いくら止めようと思っても、自分の意思では止められないんです。
もしあなたが自分の子供のチックを無理矢理やめさせようとしているのなら、おそらくその症状は直るどころか悪化する。
もし仮に表面上は直ったとしても、違う部分で何かしら違う症状が現れてくる。しかも、もっと酷い形で現れる可能性が大きい。
いいですか。
子供にチックの症状が現れたら、それを無理矢理やめさせてはならない。
いや、その症状を指摘することすらしない方がいい。
その理由を、これから説明していきますね。
チックを無理にやめさせてはならない理由
まず初めに、「なぜチックの症状が出るのか?」ということを説明します。
なぜ不自然な行動を取るのか。
なぜ不自然な行動を繰り返さないといけないのか。
実はチック症とは、「心のバランスを取るためのもの」なんです。
特に子供の心は、まだ成長段階です。
子供は年齢と共に精神面も成長していきます。
でも成長の速度や成長の仕方は、子供によって様々。
また、子供というのは周りの環境からも影響を受けやすい。
だから全ての子供が同じように成長するとは限らない。そして体の成長や周りの環境の変化に、心の成長が追い付けない時・対応しきれない時というのは必ずある。
そんな時、子供は戸惑い、ストレスやプレッシャーを感じ、何かしらの症状が現れます。不安な表情をしたり、普段はしないおかしな行動をしたり、情緒不安定になったり、または誰かを虐めたり、場合によっては人のものを盗んだり、といった様々な症状が現れる。
なぜそのような症状が現れるのか?
全ては自分の心のバランスを取るためです。
自分を取り巻く環境の変化(ストレス・プレッシャー)に、心の成長(精神面)が追い付かない・対応しきれないため、様々な症状を出すことによって心が必死にバランスを取ろうとしている。
そして、これはチック症も同じ。
チック症も、子供の成長段階に現れる様々な症状の内の1つ。心のバランスを取る手段の1つとして、チック症が出ただけです。
つまりチック症とは、自分を守るために心が発動させた救済処置。
自分を守るために、チックという症状が出ているのです。
では、もしこのチックの症状を無理矢理やめさせたら、どうなるか?
チックの症状が出ている子供は、その症状を出すことによって心のバランスを保っている。症状を使って、抱えきれないストレスやプレッシャーを乗り越えているわけです。
そんな子供のチック症を無理矢理止めてしまうと、その子は抱えきれない量のストレスやプレッシャーをまともに受けることになります。いわば、補助輪が無いと自転車に乗れない幼児に対して、無理矢理補助輪を外して「自転車をこげ」と言っているようなもの。そんなことをすれば、とたんにその子は心のバランスを崩してしまう。
またチックというのは、同じ症状を繰り返すことによって一定のリズムのようなものを作り出している。つまり何かの行動をする時、チックの症状は行動を起こすタイミングを図ったり流れを作る役割を果たしていると言える。
それを無理矢理やめさせられたら、場合によっては行動そのものが出来なくなってくる。
子供にチックの症状が出ていると、親としてはどうしても気になりますよね。子供のためにも何とかしてやりたい、親ならそう思わずにはいられない。
でも子供のことを思うなら、チックの症状を無理矢理止めるなんてことはしてはならない。
また、その症状を注意したり指摘したりもするべきではない。
指摘されただけでも、子供によってはそれが強いプレッシャーになったりする。「チックの症状を出してはいけない」と感じ、それが強いストレスとなってくる。
チックの症状は、子供の10人に1~2人は出ると言われています。症状の大小はあると思いますが、全体の10~20%の子供に何らかの症状が現れます。そしてそのほとんどが大人になるにつれ、心の成長と共に自然に無くなっていく。
大切なのは、子供にチックの症状が出ても慌てず、焦らず、イライラせず、落ち着いた気持ちで見守ってあげること。
もし子供が自分に出ている症状を気にしても、
「大丈夫、心配ないよ。大人になるにつれ、症状は自然と無くなっていくんだから。」
と、子供を安心させてあげてください。心のバランスを上手く保つ手助けを、どうかしてあげてください。
大抵のチック症は、子供が精神的に成長し、自分を取り巻く環境にうまく適応出来るようになると、自然と無くなるもの。自分の力で心のバランスが保てるようになれば、チックは必要無くなります。
日常生活に大きく支障をきたすレベルでないのなら、慌てず子供を信じて見守ってあげてください。それが子供のチック症に対して一番効果のある方法だと、経験者である僕はそう思います。
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